魚説法

2005年8月12日 狂言
今日は、また狂言を観てきました。
今回は狂言だけではなく、能も観ました。

静岡県の熱海にある、MOA美術館というところで、
能楽サークルという、子供も大人も能楽に触れようというイベントがあり、
それに行って来たのです。
ここの美術館は、立派な能楽堂を持っていて、
毎年8月1日、2日の薪能を始め、能楽の定期公演を行っています。

まず、小鼓方大倉流の大倉源次郎さんに能楽講座ということで、
能楽の簡単な成り立ちや背景などの公演を聞きました。
これがね、ご自分でも「これじゃ囃子上手じゃなく、話上手になってしまいますね」
なんてご冗談で言ってましたけど、本当に話が上手で飽きなかったです。
小鼓方、というだけありませいて、大倉源次郎さんは、小鼓の奏者です。
能を演ずる際に、シテ方さんたちの後方で囃子を奏でる方の1人です。
素人の私たちに向けて、非常にわかりやすい言葉で話してくれました。

その後、能楽鑑賞ということで、
まずは狂言、和泉流の「魚説法」という演目を観ました。
狂言の前にまず、野村萬斎さんがミニ解説ということで、
魚説法の説明をしてくれました。
そもそも、この能楽サークルというイベントが、
小中学生に能楽に触れてもらおうという趣旨ですので、
子供たちがたくさんいます。
その子供たちにもわかるように話してくれるので、
かなり噛み砕かれた、わかりやすい解説です。
萬斎さんは、声が低く、けど通る声で、美しい佇まいで解説してくれました。
やはり、日本の伝統芸能、特に能楽に携わる方の姿勢、あれは素晴らしいです。
背筋がキッと伸びていて、本当に美しい。
かっこよかった〜。
・・・と思うと、いけない、いけない、萬斎さんの狂言を観にきているのだから、と
自分で自分を戒めます(笑)

その後、能のミニ解説でシテ方宝生流、辰巳満次郎さんの話を聞きました。
今日の能の演目は「船弁慶」
満次郎さんのお話も、もちろん子供に向けているからなんですが、
非常にわかりやすいし、おもしろい。
演ずる方がこうして解説してくださることというのもなかなかないので、
非常におもしろかったです。

さて、狂言の魚説法です。
私、席は一番後ろの列だったのですが、正面のド真ん中だったんです。
本当に能楽堂の真正面。私の席が本当に真正面。
というのも、私の座っていた最後の列以外の正面席は、
全て小中学生の席になっていて、
大人のほとんどは脇正面か中正面から鑑賞だったんです。
それに一番後ろといっても能楽堂ですから、それなりに近い距離で観ることができます。

これがね。よかった。
やはり、正面で観ると違うな〜と、実感しましたね。
今まで、何度か能楽、観たことあります。
けど、それはほとんどが能楽堂ではなく、
初めて能楽堂で観た前回は脇正面でした。
脇正面でも、もちろんおもしろいんです。
正面から観るのとは違うところが観られるし。
けど、正面はやはり違う。全てのバランスが整って見えるね。
正面なんだから当然なんだけど。
演目として完成されたその形、美しさに、
それこそ息を飲みましたね。
あ〜、そりゃ正面即売り切れにもなるものだよ〜と。
狂言だけではなく、能にも言えます。

魚説法は、解説であらすじをほぼ理解していたこともありますが、
とてもおもしろかったです。
萬斎さんが解説の最後に「そうそう、この狂言ではトビウオもでてきますよ。
どこに出てくるのか、しっかり聞いていてくださいね」と言ってましたが、
とても滑稽というか、笑わせてくれるところでトビウオがでてきました。

私が個人的に萬斎さんが好きなんで、贔屓目で見てるからとは思うけれど、
やはり、萬斎さんは声の出し方が違う気がする。
抑揚のつけ方とか、鮮明さとか。すごいな〜。

狂言の後は、能「船弁慶」です。
能を観るのはひさしぶり。
ただ、前に観たときは、やはり能は難しいな〜という感想で留まってしまいました。
というのも、「能楽」という言葉で能と狂言は対にされているけれど、
言葉がね、けっこう違うんですよ。
狂言だって、昔の言葉はたくさん出てくるけれど、
でも聞いてるだけでもだいたい意味がわかる程度なんです。
が、能となると、発している言葉のほとんどの意味がわかりません。
これは子供だけじゃなくて大人も。
満次郎さんも、解説の時に「意味がわからないと思うけど日本語じゃないと思って
聞いていてください」と言っていましたけどね。
でも、今日の船弁慶。
細かく解説があったおかげで、あらすじや、ここのこれはどういう効果がある、
などなどがわかっていたので、すごくおもしろかった!!
能を「おもしろい」と思ったのは、正直初めてです。
そのくせ、昨日の寝不足がたたって、何度かオチてたんですけど(笑)

でもね、本当におもしろかった。
舞や揺をトータルした美しさが、能にはあるし。
通の方なら、解説はいらないだろうけど、
私みたいな素人には、細かい解説がないと楽しめないな〜なんて思いました。

萬斎さんも、満次郎さんも言ってましたが、
能楽は「つもりで観る」ことが重要だそうです。
例えば、狂言で太郎冠者が京へ行く、という設定があったとしましょう。
(私が勝手に仮定していきますんでね)
太郎冠者が主人に向かって、「京へ上る」と発します。
それで舞台を1周する。と、そこは主人の家から一転、京の街になるわけです。
能楽では、映画やドラマではありえない設定もたくさんあるけれど、
あると思って観る。自分の頭の中でイメージする。観ながら聞くことが大切だそうです。
そして、それこそが能楽の楽しみ方だと。
自分の中でいくらでも情景を膨らませることができるのが楽しみなんだそうです。

今日は、能、狂言の演目もいつも以上に楽しめた気もしますが、
それ以上に演じる方の解説、お話を聞けたことは、もっとおもしろかったです。
やはり、まだまだ能楽の世界の入り口しか見ていないようにも思うし、
どんどん中に入っていってしまうんだろうとも思います。
おもしろいよ〜。狂言も、能も。

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